秋山登山の美しさと寒さ対策について

空が澄んで遠くまで見える秋の山。高い山の紅葉を楽しめるシーズンが近づいてきました!
秋は夏に比べると涼しく、熱中症や落雷の心配も少なくなります。ですが、秋の高い山は9月下旬には“冬”のような寒さになることも。
2015年の9月末に北アルプスの涸沢で紅葉を楽しんだ時には、夜には薄氷が張るほど冷え込みました。
この記事では北アルプスの涸沢~パノラマルートを登山した記録とともに、を記載します。

秋山の魅力

空気もすっきりし、遠くまで見渡せる秋の山。壮大な紅葉はもちろん、夏に比べて気温が落ち着き、熱中症や落雷のリスクが減るため、多くの登山者にとっても楽しみなシーズンと言えるでしょう。
しかし、特に標高の高い山域で注意すべき点も存在します。それは、「冷え込み」です。昼間の快適な気候に合わせていると、思わぬリスクに繋がる可能性もあります。

本記事では、北アルプスの紅葉の名所である涸沢(からさわ)からパノラマルートへの1泊2日のテント泊山行記録を交え、秋山登山を安全に楽しむための重要なポイントを解説します。特に「寒さ」への備えに焦点を当てていきます。

横尾から眺める前穂高岳
横尾から眺める前穂高岳

秋山の見どころ:「涸沢の紅葉を見ずして穂高を語ることなかれ」 紅葉の名所、涸沢カール

1日目、2015年9月29日。
上高地から横尾まで3時間。横尾から、屏風岩、本谷橋を経て、更に3時間の道のりの末にたどり着いたのが、北アルプス穂高連峰に抱かれた涸沢(からさわ)カールです。
※カールとは、氷河によって削られたお椀型の地形のこと。

この場所の秋の美しさは、多くの登山者を魅了し続けています。その美しさは「涸沢の紅葉を見ずして穂高を語ることなかれ」と言われるほど。
カールを彩るナナカマドの赤、ダケカンバの黄色、そしてハイマツの緑。これらが織りなす風景は絶景でした。

赤、黄、緑の競演。

この日はテントで宿泊。夜中にテントから頭を出し、満点の星空を眺めることができました。気軽に星空の下に出られる。これは小屋泊にはないテント泊のメリットですね。

秋山の見どころ:穂高連峰を見渡すパノラマルート

2日目、9月30日。

夜明け前に起床。外は冬のような寒さ。ダウンジャケットを着込み、手袋・ニット帽を装着します。散策すると、池には氷が張っていました。寒いはずですね。
転倒や滑落で行動不能になった場合、この寒さの中で一晩を過ごすのは非常に厳しいものになるでしょう。

さて、テントを撤収し出発です。
涸沢と横尾のメジャールートではなく、屏風のコル方面へ向かう「パノラマルート」へ。この未知は急斜面のトラバースもあり難易度が高く、初級者向けではないルートですが、その名の通り穂高連峰の大パノラマを展望できます。
※パノラマルートは相応の体力と歩行技術が求められる、健脚向けのルートです。

屏風のコルに立つと、目の前には、前穂高岳から奥穂高岳、そして北穂高岳へと続く岩の稜線が壁のように連なります。

屏風のコルより穂高連峰を望む。左から前穂高岳、奥穂高岳

そして右に視線をやれば、巨大な山塊の北穂高岳の向こうに、日本三大キレットの1つ「大キレット」の鋭い切れ込み、南岳、その奥には槍ヶ岳の姿まで一望できます。

この画角・この距離で、槍・穂高を眺めることができるのは、険しい道のりを歩んできた者だけが味わえるご褒美です。

屏風のコルより。左から北穂高岳、その向こうには(見えないが)大キレット、そして槍ヶ岳(右奥)へと続く稜線

屏風のコルから先の下りも不安定な足場が続き、緊張を強いられます。行かれる方はご注意を。

秋山登山の注意点:麓の街との気温差

美しい景色を見せてくれる秋の山ですが、注意すべき側面も存在します。

9月下旬から10月にかけて、麓の街ではまだ日中汗ばむような陽気が続くこともありますが、その感覚のまま山に入るのは危険です。
標高が100m上がると気温は約0.6℃下がると言われますが、標高2,300mの涸沢では、単純計算で麓より約14℃も気温が低いことになります。

麓が快適な20℃の日でも、山の上は6℃。これはもう冬の気候です。この「麓の気候とのギャップ」を理解しておくことが大事です。
(もちろん、日中、かつ、晴れていれば快適なのですが)

急激な冷え込みで氷点下になりうる

山の気温は、日中と朝晩でさらに大きく変動します。日が傾くと気温は急降下し、放射冷却現象も相まって、朝晩には氷点下まで下がることも珍しくありません。
実際に、涸沢ではテント場近くの小池に薄い氷が張っていました。

夜間の冷え込みは想像以上。水たまりには薄氷が。

低体温症のリスク:低温に加えて、避けるべき「濡れ」と「風」

ただ気温が低いだけなら、防寒着を着込むことで対処できます。しかし、秋山で本当に警戒すべきなのは、「濡れ」と「風」が組み合わさることです。

  • 濡れによるリスク: 雨という外側からの濡れ、加えて、運動による汗でウェアと体が濡れることで体温が失われます。
  • 風による体温低下: 秋の稜線では、しばしば冷たく強い風が吹き付けます。風速1m/sで体感温度は約1℃下がると言われており、風によっても体温が奪われます。

この「冷え(気温)」「風」「濡れ」の3つの要素が揃うと、人は低体温症に陥る危険があります。
低体温症は、判断力の低下や体の震えを引き起こし、重症化すると行動不能に陥る、非常に恐ろしい症状です。

秋山では「体を冷やさない、濡らさない」ための知識と備えが重要になるのです。

リスクを回避し、安全に楽しむために

これほどのリスクがあると聞くと、秋山登山が少し怖く感じられる方もいるでしょう。しかし、要点を押さえて正しく備えれば、リスクは最小限に抑えることができます。

  1. 適切なウェアリングと調節
    体を「冷やさず」「濡らさない」ための基本はレイヤリング(重ね着)です。汗を素早く吸収・拡散させるベースレイヤー(吸湿速乾性のある肌着)、空気の層を作って保温するミドルレイヤー(保温性の高い中間着)、そして雨風から体を守るアウターレイヤー(雨風を防ぐ上着)。これらを気象状況(暑さ・寒さ)や運動量(ハイペースなのか、ゆっくりなのか)に応じてこまめに着脱し、常に体をドライで快適な状態に保つことが重要です。
  2. 気象の理解と予測
    そして、ウェアリングと並んで重要となるのが、天気が崩れそうか把握する力です。
    麓の天気予報の確認だけでなく、自分が行く山の標高や地形を加味して天気を把握する、また、現地で気象の悪化の兆候を捉えること(観天望気)が大切です。
    これらができれば、「風が強まる前に稜線歩きを終える」「雨が降る前に小屋へ着く」といった先手の行動が可能になります。

最高の秋山体験は「知識」から始まる

素晴らしい景色も、安全という土台があってこそ心から楽しむことができます。そしてその土台を最も強固にしてくれるのが、経験や勘だけに頼らない「正しい知識」です。

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