積雪期の富士登山の怖さと「この格好で登れますか?」という問いの怖さ

積雪期の富士山は本当に怖かった!というお話。

富士山の積雪期の事故

今シーズンでも

雪山で事故・遭難相次ぐ 富士山では滑落の男性死亡

富士山 滑落死男性の身元判明
など、積雪期の富士山滑落事故は多いです。
富士登山オフィシャルサイトにおいても、注意喚起がなされています

今回はそんな積雪期の富士山に登って、強風での撤退を経験した話、そしてその撤退後に会った登山者の話を書こうと思います。

残雪期に登った時の動画

2014/05/18、吉田口から登り、本八合目付近。
天気が良く表面の雪は多少溶けておりアイゼンの爪は刺さるものの、その下はしっかりと凍っていました。

動画にあるように風が強く、うかつに足を出すとバランスを崩してこけてしまいそう。
富士山は風を避けられるような岩陰なども少なく、風は一瞬止まっては激しく吹き付け、容赦のない山でした。
動画内では「やばいやばい」と笑っていましたが、頭の中では、このシーズンに登山者が滑落して死亡する事故のことがよぎっていました。
この凍結具合と斜度では、滑落したら止まらないと思い、メンバーで話して下山を決定。

積雪期の富士山は下山も厳しい

撤退を決めて降り始めるも、下山もまた厳しいものでした。

ツルツルの長い斜面、視線が下に向かうと「滑ったらあの下のほうまで止まらないな」と思い、恐怖心が湧いてきます。
大抵の山ではいくらか平坦な場所に足を置けるものですが、このルートは斜面が続き、一息着ける場所も少なく、肉体的にも精神的にも疲労しました。
山のベテランからアイゼンワークの指導を受けながら、注意して下りました。

「僕のこの格好で何合目まで登れますかね?」

そうして下りてきた5合目登山道の入り口付近。
下山してきた我々を見て、「僕のこの格好で何合目まで登れますかね?」と聞いてきた登山者の男性がいました。

今から登るらしく、格好と言っても、50リットルぐらいのザックを背負っており、中身はそれなりに詰まっていそう、でもそんなに厚着ではない、というもの。パーティではなく、1人。

アイゼンも実践で使ったことはないとのこと。

「これだけ滑落事故が起こっている積雪期の富士山にアイゼン練習もなしに単独で行くなんて!」とこれまた怖くなります。
「高いところは風が強くて厳しいですよ、下のほうでアイゼン練習だけしてはどうですか」と答えて別れました。
別れた後も「山を舐めるなとか!厳しい答えのほうが良かったのだろうか」「いやいや自分たちが強風で苦しんだようなところまで行くとは限らない、低いところで遊ぶだけかもしれないし」としばらく悶々としていました。

格好だけでは登れない(そもそも、初めて会った人が、格好だけで登れるかわかるはずがない)

その山に登れるかどうかを判断するには

  • 自分の技術・体力
  • 登る山で求められる必要な技術・体力

この2つの把握が必要だと考えています。

が、これらは自分だけで把握するのはなかなか難しいものです。
体力が不足していても日程に余裕を持たせてゆっくりと行けばなんとかなりますが、技術に関しては自分一人では判断しづらいものです(特に雪山登山や、岩場通過が求められる箇所は)。

ましてや、それをその時偶然すれ違った人には判断できませんし、「それなら行けますよ」という安易な答えは「この人に何かあったら…」と思うと怖くて言えません。

登山をもっと安全に楽しむために、メンターを見つけよう

問題は、この男性が「この格好で登れますか」と問うことそれ自体ではなく、山について教えてくれる、相談できる相手がいなかったことだと、今になって思います。

映画『MERU メルー』でも語られている通り、登山では、自分のことを見て、力量を把握してくれて、導いてくれる人=メンター(先生)の存在が重要です。
メンターと一緒に登り、相談し、力量を判断してもらう。

どこかの登山スクールでも良いですし、山岳会でも良いと思います。
「自分はこの山に登れるだろうか」という”不安”を受け止めてくれるメンターと出会えれば、登山はもっと楽しく安全になります。

やまスクは、独学の登山者にとって、登山のメンターと出会える場所にしたい、そう思いながら取り組んでいます。


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